「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」

公開以降、結構ボロクソな評価を受けていたが、実際に観てその理由がわかった。
巨人と立体機動装置という設定は引き継いでいるものの、原作とはまったく別の作品と言っていいだろう。
世界感もかなり異なるし、そもそもキャラクターの人間関係、性格もまったく異なっている。
だから、原作を読んだ人にとっては、映画のストーリー展開は戸惑うばかりである。

巨人を防ぐための高い壁の内側で暮らすエレン(三浦春馬)は、壁の外に出ることを望んでいた。
しかし親友のアルミン(本郷奏多)とミカサ(水原希子)は、エレンを止めようとする。
3人が壁の間近に近づいた時、ここ100年姿を見せていなかった巨人がいきなり姿を現した。
しかも、壁の高さを上回る大巨人である。
大巨人は壁を蹴破って穴を空け、そこから多数の巨人が壁の内側に浸入する。
あっという間にパニックに陥る人々。
逃げまどう人たちは建物に立てこもるが、巨人たちは屋根をぶち壊し中の人たちまで食い始めた。
人々は農耕エリアを捨て、さらに内側にある壁の中の商工エリアに避難した。
そしてエレンは人の波に押されて、ミカサを救う事ができなかった。

その2年後、エレンとアルミンは訓練を受け、巨人と戦う兵団に入団していた。
農耕エリアに残された最後の爆薬を使って大巨人が空けた壁の穴を塞ぎ、さらなる巨人の侵入を防ぐ事が目的だった。
すでにシキシマ隊長(長谷川博己)率いる先兵団が爆薬の場所を押さえており、エレンたちは商工エリアを出て農耕エリアに入って行った。
だが、静かに近づいていきた巨人の群れに遭遇、兵団は大きな打撃を受けてしまう。
生き残った兵団がなんとか爆薬の場所に到達すると、シキシマ隊長の先兵団の中に、なぜか班長としてミカサが参加していた。

原作の面白さの要素は、巨人と戦う恐怖を抱えながら、少年たちは生き残った人々を護るため、唯一の希望である立体機動装置を使って戦う部分である。
訓練中は正義感で強がっているものの、いざ実戦で巨人の前に立つと、恐怖心で思うように戦えない。
しかしお互いに励まし合って、巨人とギリギリの戦いをする緊迫感が、作品の面白さを引き出している。

だが映画には、この緊迫感がほぼない。
まず、シキシマ隊長、ミカサ班長以外の兵団が、あまりにも弱すぎる。
原作でもリヴァイ兵士長が群を抜いた強さを見せているが、それ以外の兵士も勇気を持って戦い、巨人をせん滅していく。
しかし映画のキャラは、これが初陣の兵士ばかりとは言え逃げてばかり。
鉄拳流に言えば「こんな『進撃の巨人』は嫌だ」という感じである。
さらにエレン、ミカサ、シキシマの間の中途半端な三角関係も、観ていてちょっとイライラする。
この部分も「こんな『進撃の巨人』は嫌だ」である。

また、原作との相違を考えなかったとしても、映画として非常に作りが雑だ。
冒頭で巨人が壁を破って侵入したとき、逃げまどう人の流れが不自然。
巨人の空けた穴は一つだから、人々はその穴から奥の壁の方向に向かって流れ、かつ壁のすぐそばにいたエレンたちは「家が心配だ」と言って走り出すのだから、人の流れに合わせて走るはずだ。
なのになぜか、エレンたちは人の流れに逆らっている。
どこに向かっているのかサッパリわからない。

さらに、人々が逃げ込んだ建物の中に、エレンもいた。
そこからエレンが外に出た後、複数の巨人に建物が襲われたにも関わらず、そこからふらふらと逃げるエレンの目の前には、残骸があるものの巨人は一切見当たらない。
この段階では倒される巨人は皆無なので、エレンの目の前にも巨人がウロウロしていなければおかしい。

その他、爆薬の保管地域に駐屯していた兵団は、いとも簡単に巨人に襲撃されてしまう。
夜中とは言え、兵団だったら監視兵を立て敵の接近に注意するものであろう。
そんな間抜けな兵団なのに、わらわらと近づいてくる巨人たちをすり抜けるのはお得意のようで、司令官たちはあっという間に逃げ切ってしまう。
ここそこがあまりにも雑な作りで、観ていてかなり閉口した。

原作の諫山創が制作に一枚噛んでいると聞いていたので、そんなにひどい作品ではないだろうと思っていた。
しかしながら、ハッキリ言って原作者がこの作品を本当に認めているのか、疑わしい限りである。
逆にこの映画を認めていると言うのであれば、原作者はマンガを描く能力はあるものの、映画を制作する能力は皆無であると言っていいだろう。

まだ完結編が残っているとは言うものの、正直あまり期待はできない。
完結編で本作品のダメなところをすべて解決しないかぎり、実写版「進撃の巨人」は映画史に残る駄作であると言われても、仕方ないだろう。


86.進撃の巨人 ATTACK ON TITAN


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by ksato1 | 2015-08-31 06:27 | 映画 | Comments(0)