「HERO」(2015年版)

前作はイ・ビョンホンを登場させるためだけに、久利生と雨宮を韓国に派遣させると言う無理やりな展開だった。
脚本と出演者の演技力でそこそこ見られる作品になっていたものの、強引な設定とラストに全員を横一列に整列させると言う興醒めな演出でイマイチな仕上がりになってしまった。
今回も設定はかなり強引そうなので、あまり期待しないで観に行った。
で、結論はと言うと、想像していたよりは悪くない作品だった。

港区の某所で交通事故が起きた。
被害者は道路にいきなり飛び出してきたという事で、加害者の落ち度がない可能性が高い。
事故を担当したのは久利生(キムタク)と麻木(北川景子)だが、そこに大阪地検の検事雨宮(松たか子)が現れる。
事故の被害者は、雨宮が追っている暴力団の事件の重要参考人だった。

雨宮の事務官一之瀬(大倉孝二)を含め、4人で事件現場を調査したところ、被害者は事件直前にネウストリア公国の大使館にいた可能性が高い事がわかった。
外交特権のある大使館は日本警察も検察も手が出ないが、久利生は強引に調査を進めようとする。
その結果、外務省から法務省に厳重注意がなされてしまう。
それでもめげない久利生はネウストリア公国の料理を出す飲食店を調べ、そこから大使館員に近づこうと画策する。
一方雨宮は、相手が大使館という事で調査を諦めて大阪に戻ってしまった。

久利生が調査を進めるうちにだんだん妨害入るようになり、やがて久利生はダンプカーに突っ込まれて負傷してしまう。
久利生の負傷を知って、慌てて大阪から東京に戻る雨宮。
久利生は一度大阪に帰った雨宮を決して批判したりしないのだが、かつてコンビを組んでいた雨宮は久利生の本心をよく理解しており、一緒に調査を始めるのだった。

検察の力が及ばないと言えば、すぐに思い浮かぶのが国会会期中の議員と大使館である。
前作では国会会期中ではなかったものの議員と対峙し、そして今回は残る大使館との戦いである。
この段階で、ちょっと設定が安易すぎではないかと感じた。
しかもその架空の国が、ヨーロッパの小国というのも安っぽい。
さらに、久利生たちが追っているのは交通事故で、被害者が事故直前にいたのが大使館、というだけである。
大使館が最初から、「たしかに被害者は事故の直前に大使館にいました。知人に会いに来ていたようです。彼女がなぜ、大使館を出た後に慌てて道路に飛び出しのかはわかりません」と言ってしまえば、話はそこで終了で物語はスタートしない。
まず大使館ありきで、そこから強引にストーリーを考えているから、映画全体にかなり大きい違和感が残ってしまう。

しかし、それを払拭しているのは出演者の演技力だ。
目前に大きな壁が立ちはだかり、自分達の努力ではどうにもならないところを、決して諦めずに突き進む。
特に今回注目したいのは、松たか子の存在感である。
あえて、久利生の正義感を前面に出さずに、検察官になった松たか子の雨宮にその役を担わせている。
最初に雨宮が調査を諦めて大阪に帰ろうとするとき、「これくらいで諦めるのかと思ってるんでしょ!」と久利生に詰め寄る。
その時に久利生が説教臭い事を一切言わないのだが、逆にそれが雨宮の正義感に火を点けることになる。
規則と正義感の狭間で自分にいら立つ演技が巧く、久利生の病室の窓から外を見ている時の背中の演技も素晴らしい。
他の役者の演技を抑えて松たか子の演技力を十分引き出したという点は、演出もいい仕事をしたと言えるだろう。

とは言え、佐藤浩市の使い方はちょっともったいなかった。
外務省欧州局長と言う役がらだが、彼が事件解決のために相当な労力をはかった、という演出も欲しかった。
でなければ、最初にあれだけ調査に反対していた理由が成り立たない。
佐藤浩市の松葉の、心の葛藤のメリハリの表現が少なすぎた。
久利生たちの調査のために外交はかなりの難局になってしまう、しかし松葉が動くことで外交もなんとか持ち直す、久利生がニュースを見て難局にしてしまった事を知り松葉に詫びに行く、「検察は検察の仕事最大限にして外務省は外交を最大限にする、オレが何年外交をしていると思っているんだ」的なセリフを松葉に言わせたら、映画全体もかなり引き締まったんじゃないかと思う。

脚本自体は、シリーズ全体の面白さをしっかり踏襲していたと思う。
役者もかなり豪華な顔触れだったのだから、設定の部分をもっともっとしっかり作りこんでおけば映画としてかなり完成度は高くなったんじゃないかと思う。

大阪地検難波支部の事務官大倉孝二や支部長のイッセー尾形など、今回さらになかなかいいキャラクターが生み出されているので、この後のシリーズやスピンオフ作品にも期待したい。


79.HERO(2015年版)


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by ksato1 | 2015-08-16 09:45 | 映画 | Comments(0)