「リアル鬼ごっこ」

去年、一昨年と1作品ずつしか公開がなかった園子温の、今年3作品目の作品だ。
今年と言っても2カ月で3作品、そしてこの後9月にも「みんな!エスパーだよ!」が公開される予定。
ただ、「ラブ&ピース」は園子温ぽかったが、「新宿スワン」はハッキリ言って園子温が監督したとは思えない出来栄えだった。
で、この「リアル鬼ごっこ」はと言うと、非常に微妙な感じである。

女子高生のミツコ(トリンドル玲奈)は修学旅行中のバスの中にいた。
社内はテンションの上がった女子高生が大騒ぎしていたが、いきなりカマイタチのような突風が吹きバスは上下に真っ二つになってしまう。
床に落ちたペンを拾おうとしゃがんだミツコだけが助かったが、それ以外の運転手、乗客は胴体を真っ二つにされて全員死亡。
パニックに陥ったミツコは逃げるために走り出す。
やがてミツコは、他の女子校に登校する生徒の集団に遭遇する。
すると登校する生徒たちが、あたかも昔からミツコを知っているかのように挨拶をしてくる。
訳がわからないまま、一緒に登校するミツコ。
そこには親友のアキ(桜井ユキ)たちがいた。
まるで何もなかったかのように、その学校での生活が始まる。
ミツコはよくわからないまま、自分が朝遭遇した殺人事件は夢なのかと思い、その話をアキたちにする。
すると仲間の一人のシュール(冨手麻妙)が、それはパラレルワールドの話だと説明を始める。

原作は山田悠介の人気作品。
原作は読んでいないが、最初の映画は観た。
ただ最初の映画は、世界感は面白味があるものの予算不足のためか、ちょっと迫力不足の出来だった。
今回は、タイトルにインスパイアされた園子温が原作を読まずに脚本から制作。
公開前の触れ込みでは原作の「佐藤さん」ではなく、「全国のJK(女子高生)」がターゲットとの事だったが、正確には女子高生がターゲットという訳ではない。
篠田麻里子演じるケイコは花嫁だし、真野恵里菜のいずみはマラソンランナーだ。
ただ、そのあたりはあまり重要ではなかった。

訳のわからないまま逃げ続けるミツコの設定が、ストーリー終盤までタネ明かしされない。
これってこのまま「夢落ち」で終わるんじゃないの、と思ったが、さすがに「夢落ち」ではなかった。
とは言え、風呂敷の畳み方はかなり強引だ。
この落とし方がアリかナシかと問われれば、なくはない、と答える。
だが、オチに納得いかない人も多いだろう。

そして、ストーリーの展開もかなり乱暴だ。
こういうあり得ないシチュエーションの映画の場合、あまり細かく整合性を考えずに勢いだけで押しまくる、という手法もあるとは思う。
実際、ギリギリの整合性は取れているとは思うが、それでも最後まで説明されない部分も多い。

とは言えドローンを駆使した空撮なんかは巧いし、何より逃げまくるトリンドル玲奈の映像はやはり園子温にしか撮れないだろう。
トリンドル玲奈はかつてTVドラマで山荘に閉じ込められる役も演じていたが、その時から怯える演技力はかなり巧いと思った。
今回はさらにパニックと安心のメリハリが素晴らしい。
追手の狂気の演技も園子温らしさである。

しかし総合的に考えると、園子温だから許される作品であり、それ以外の監督がこの映画を撮ったと言ったらケチョンケチョンにけなされるだろう。

とは言え、

それとは別の話になるが、ネットの書き込みでは「原作読まないで映画を作るなんて、山田悠介がかわいそうだ」と言う声もあるらしい。
たしかに原作の要素は主人公が逃げ回るという部分しかないが、しかし山田悠介が映画化を許可したからタイトルが「リアル鬼ごっこ」になっている訳だし、そもそも最初に映画化された時も原作からは大きく書き換えられた内容になっていた。
まあ、そういう人たちには映画を観てもらわなくても結構だとは思うけど。


70.リアル鬼ごっこ


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by ksato1 | 2015-07-14 21:55 | 映画 | Comments(0)