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安藤サクラの2作品

今回のギンレイは安藤サクラの2作品だ。
初日だか二日目の夕方に、「0.5ミリ」のエグゼクティブ・プロデューサー奥田瑛二が挨拶に来るほど力の入れようだ。
だが奥田瑛二が登壇した日に客が集中したのか、あるいは「0.5ミリ」が3時間を超える作品のためか、私が観た通常回は半分ほどしか席が埋まっていなかった。

まずその「0.5ミリ」。
原作、脚本、監督を安藤桃子が担当している。
そしてフードスタイリストとして安藤和津も参加。
結局のところ「家族作品」である。
そしてズバリ言ってしまうと、たとえ奥田瑛二がプロデューサーであろうとも、この作品を映画として評価してはいけないと思う。

山岸サワ(安藤サクラ)ヘルパーとして働いていたが、ある事件のためこれまで働いていた会社を辞めることになってしまう。
会社の寮も出る事になり途方に暮れたサワは、カラオケボックスの受付で利用方法が理解できずに困っている老人を見かける。
無理やりその老人とカラオケボックスに入ったサワは、無理やりおしかけで老人の面倒を見ることを思いつく。

まず一人目が元自動車工の茂(坂田利夫)だ。
独り暮らしで奇行のために友達がいない茂は、貯めこんだカネを詐欺グループに狙われるが、サワに助けられる。

次の老人は、元教師の真壁(津川雅彦)だ。
真壁は元教師だけにプライドが高い。
そして痴ほう症の妻(草笛光子)がいる。
妻の介護を担当しているのが通いのヘルパーの浜田(角替和枝)だ。
真壁は嫌がるが、サワは無理やり真壁家に入り込みヘルパー兼お手伝いとして住み込みを始める。

最後は、最初に事件があった片岡家のマコトのところに転がり込む。
事件後、マコトは父の元に身を寄せており、かつて海の家であったと思われるボロボロの家に、3人で生活を始める。

タイトルの「0.5ミリ」とは、真壁の言葉にある人間の距離感である。
「たとえ0.5ミリでも同じ方向を向いていれば」的なセリフが一度だけ出てくるが、正直セリフ自体が長すぎるうえ、前後のシーンと関連するキーワードでもないのでまったく印象に残らない。

そしてストーリー全体も、何がいいたかったのかよくわからない。
一つ一つのエピソードに関連性はまったくない。
唯一関連があるのは、冒頭の事件を起こした家と、その家に住んでいたマコトがラストエピソードにつながる事だけ。
まるで誰かが見た夢を、そのまま映像化したようでもある。

演出もかなり甘い。
茂は銀行を信用していないので使わない、と言っているのに、彼の貯め込んだカネは綺麗な新札で銀行の帯封でまとめられている。
銀行を信用しないというのなら、シワシワのカネを輪ゴムで留めている、くらいの演出は欲しい。
マコトが駄菓子屋で万引きのような事をするが、いくら駄菓子屋と言えども店の中でモグモグ食べ始めたりしないだろう。
姪が現れた瞬間、真壁がいきなりボケてしまという演出も意味不明だ。

ストーリーと言う部分で考えれば、とても映画と言えるシロモノではない。
ただ、それでも何か惹きつけられる物が、この映画にはある。

一つは安藤サクラの演技力だろう。
このとりとめのない作品を映画と言うレベルに引き上げたのは、一にも二にも安藤サクラの演技力だ。
押し掛けヘルパーとして茂や真壁に取り入る部分はかなり強引だが、それ以外はとても自然な演技である。
この映画がもし安藤サクラ主演でなかったとしたら、商業映画として劇場公開されたかどうか、疑問である。

そしてもう一つは、演出はダメダメだがアングルはなかなか素晴らしい、と言う事だ。
ストーリーは意味がよくわからないが、アジの味醂干しのザルなど、非常に美しいカットが多い。
ダラダラしたストーリーが続く映画はストレスが溜まり、途中で席を立ちたくなるが、この映画は美しいカットが多用されているためか、あまりストレスが溜まらない。
ただし、その美しいシーンもそれぞれが少しずつ長すぎる。
もうちょっと短く切り取れば、映画全体が引き締まってくると思う。
監督が編集にどれだけ口出ししたかはわからないが、そのあたりは周りが進言してもっと短く切らせるべきだったと思う。

とてもシロウト臭い映画ではあるが、もうちょっときちんと作ればもっといい映画になったのではないかと思う。

続いて「百円の恋」。

斎藤一子(安藤サクラ)は30過ぎて弁当屋を営む実家で暮らすパラサイト・シングルだ。
真面目で性格のキツイ妹が子どもを連れて出戻ってくると、すぐにケンカとなり家を出て一人暮らしする事になる。
だがその部屋も母親が用意したものだった。
生活力のまったくない一子は、なんとか100円ショップの店員にもぐりこむ。
ある日一子は、店に行く道すがらにあるボクシングジムに興味を持つ。
そのジムに登録してる狩野(新井浩文)が気になって仕方なかったのだ。
一子がボクシングジムに入会すると、狩野は入れ替わるように辞めていた。
だがはなんとか狩野と仲良くなり、一緒に暮らすようになる。
しかし狩野はすぐに部屋を出て行ってしまった。
一念発起した一子はボクシングに邁進し始める。

ストーリーはまずまずと言ったところか。
想像以上の展開はなかったが、100円ショップの店員の人間模様と一子の恋愛を、うまく織り交ぜている。
そして特筆すべきは、安藤サクラのボクシングだ。
冒頭のだらけた腐女子から、いきなりスゴいフットワークのボクサーとなる。
この安藤サクラのボクシングだけでも観る価値がある。
クライマックスのボクシングシーンも、やはり安藤サクラあっての名シーンと言えるだろう。

個人的には「0.5ミリ」より「百円の恋」の方を、大きく評価したい。


68.0.5ミリ
69.百円の恋


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by ksato1 | 2015-07-11 22:10 | 映画 | Comments(0)