「イニシエーション・ラブ」

静岡の大学に通う鈴木は、成績優秀で富士通に内定が決まっているものの、見た目は大柄でモッサリしておりお世辞にも女性にモテそうな外見ではない。
本人もそれを自覚していたのだが、ある日友人に誘われた合コンで、成岡繭子(前田敦子)に気に入られてしまう。
その日から鈴木の人生は代わった。
繭子との夢のような日々が始まるのである。

原作の書評や映画の予告編で、あまりにも「この作品はラストに大どんでん返しがある」という情報が入りすぎてしまったため、映画もかなり身構えて観てしまった。
その結果、映画開始5分でおおまかな構成がほぼ想像できてしまった。
映画の途中に貼られた伏線もすべて気づいてしまったのだが、その気づいてしまった伏線に対しても「あれっ?」とか「んっ?」と思わせる仕掛けがしてあり、ラストではそれらがすべて解決する。
全体の構成がわかりつつも最後にもう一捻り入っている点は、なかなか巧く作られた作品である。

また、何度も画面に映し出されて身構えて観ている者に「これは何かの伏線では?」と思わせておいて、まったく関係ないアイテムも登場する。
意図されたものか偶然なのかは定かではないが、深読みする者がある人物に注目するように演出されているように見えたので、制作者が意図してそれらのアイテムを登場させたと私は考えた。

最後のネタばらしの見せ方も、非常にわかりやすくて秀逸。
原作だとキーとなるシーンのページを何度も探さなければならないかもしれないが、映画はすべてが俯瞰できるようになっている。

ただ原作の部分に触れると、繭子が鈴木に別れを告げられる前の行動が唯一やや強引。
あれが別れを告げられた後の行動であれば整合性が取れるが、あのエピソードの直後にそれはないだろう、という感じである。

とは言え、前田敦子の小悪魔的な演技は秀逸で、出演者のファッションや小道具、当時活躍したタレントをオマージュとして起用するなど、制作者の1980年代後半への強いこだわりが感じられた。
個人的には木村文乃の魅力も存分に引きだされていて満足できた。

堤幸彦はここのところ「20世紀少年」「SPEC」で風呂敷を広げ過ぎてラストをグズグズにしてしまい、「TRICK」も今ひとつ、「悼む人」でも迷走状態であったが、この作品で復活を遂げた感じである。


49.イニシエーション・ラブ



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by ksato1 | 2015-06-02 07:01 | 映画 | Comments(0)