「チャッピー」

「第9地区」監督のニール・ブロムカンプの作品だ。
「第9地区」でも単なるSF映画にせず、社会問題を取りこんだ作品に仕上げていたが、今回の作品でも善悪論を取りこんだ作品となっている。

ディオン・ウィルソン(デーヴ・パテール)は南アフリカの兵器製造メーカーで働いている。
彼が開発した自律歩行型ロボット「スカウト」は南アフリカ警察に正式採用され大活躍、麻薬組織を次々と壊滅状態に追い込んでいた。
「スカウト」は他国も興味を持ち始め、ディオンは経営者のミシェル・ブラッドリー(シガニー・ウィーバー)からも厚い信頼を受けていた。
一方、人間の脳はを使って操縦する重装備の兵器「ムース」を開発していたヴィンセント・ムーア(ヒュー・ジャックマン)は、スカウトの活躍により自分の開発費をどんどん削られていた。
このままでは社内で自分の居場所がなってしまうと考えたムーアは、なんとかスカウトではなくムースを採用してもらうよう警察幹部に掛け合うものの相手にされない。

一方、ディオンはスカウトの成功に飽き足らず、さらに人工知能:AIを持つロボットの開発を始めていた。
ようやくプログラムが完成し、ミシェルにテストの許可を申請するが、ミシェルからはAIは危険であり社に利益をもたらさないと却下されてしまう。
ディオンはミシェルの決定に不満を感じ、プログラムテストを行うべく、組織との戦闘で破壊され廃棄処分となったスカウトをこっそり持ち出してしまった。

その頃、ニンジャ、ヨランディ、アメリカの3人組のチンピラは、カネの工面に困っていた。
ドラッグを大ボスに届ける際にヘマをし、さらにスカウトのチームに尾行されアジトを壊滅状態にされてしまう。
怒った大ボスは3人組に多額の賠償金を請求する。
困った3人組は、スカウトを奪ってリセットし、自分達の手下として利用することを思いついた。
早速ディオン誘拐を実行する3人組。
折しも廃棄スカウトを持ち帰る時、ディオンは3人組に拉致されてしまった。
ディオンは3人組の隠れ家でAIを起動、まるで赤ん坊のような知能を持つスカウトが動き出した。
スカウトはヨランディによりチャッピーと名付けられる。
ディオンはチャッピーを感性を持つスカウトに育てたかったが、ニンジャはそれを許さない。
チャッピーを騙して悪の道に引きずり込もうとする。
最初はなかなかニンジャの言う事を聞かないチャッピーであったが、ニンジャからお前はバッテリーがもうすぐなくなってしまい、そうなると動けなくなる、だからその前に新しいボディを買うカネを稼ごうとそそのかされ、次第にディオンの言う事を聞かなくなり、ニンジャ達と行動を供にするようになる。
やがてチャッピーは、ボディを買うためのカネを稼ぐと言う事で自分を正当化し、ニンジャと一緒に車の盗難を始めるのだった。

ロボットが自我に目覚めて、自分の存在意義に悩むと言う設定は、アトムの時代からあったかもしれない。
だがアトムは誕生したその瞬間から小学生程度の知識と一般常識を持ち、自分の判断で行動をしていた。
アトムも当初はピノキオのように無邪気に振舞っていたが、この映画ではその部分をさらに掘り下げ、チャッピーが動き始めた時には本当に何も知らず、ヨランディが母親のように接することによって少しずつ自我を形成していくシーンを描いている。
このチャッピーの成長過程の描き方が巧い。
ニンジャに「学校だ」と言われ、チャッピーだけで不良グループの中に放り投げられてしまう。
スカウトが来たと思った不良グループはチャッピーを恐れるが、チャッピーが子どものように怯えているのを見ると、逆にチャッピーを攻撃し、放火までしてしまう。
チャッピーはここで恐怖心を覚える。

様々なエピソードの中で、チャッピーの中でだんだん正と誤という判断がはっきりと形成されていく。
しかしそれはあくまでもシンプルな正と誤であり、人間の感覚の善と悪でない。
「善悪」ではなく「正誤」で行動するチャッピーに説得力があるので、見ている者もチャッピーが間違った行動をしても仕方ないと理解し、この後のチャッピーがどうなってしまうのかハラハラさせられてしまう。
非常に巧い見せ方だ。

もちろんニール・ブロムカンプ監督だけに、CGは見応え充分だ。
そして天才プログラマーにインド系のデーヴ・パテール、キャリアウーマンの経営者にシガニー・ウィーバー、兵士出身のプログラマーにヒュー・ジャクソンと、キャラクター設定が非常にわかりやすい配役となっている。
全編を通して、監督の映画に対するセンスを感じる。

あまり話題になっていないが、SF映画でありながら善と悪とは何を基準にするのか、その部分にも焦点を当てている良作だ。
こういう作品は夏休みに公開して、家族で観に行った方がいいんじゃないかとも思った。


44.チャッピー


※こんな本書いてみました。
よろしかったらご購読ください



●放射能ヒステリックビジネス

http://www.amazon.co.jp/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9-%E4%BD%90%E8%97%A4%E7%9D%A3%E8%AA%8C-ebook/dp/B00DFZ4IR8/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1404017694&sr=8-1&keywords=%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9
[PR]
by ksato1 | 2015-05-27 07:35 | 映画 | Comments(0)