「王妃の館」

原作が浅田次郎、監督は「探偵はBARにいる」シリーズの橋本一という事でかなり期待して観に行ったのだが、近年希にみる期待外れの映画だった。

人気作家の北白川右京(水谷豊)たちは、10日間で1人150万円のパリツアーに参加していた。
宿泊はルイ14世が寵姫のために建てた「王妃の館」で、現在は超高級ホテルだった。
しかしこのツアー会社は倒産寸前で、同じ日程で同じホテルをダブルブッキングしていた。
150万円のツアー客が観光に出ている間だけ、格安ツアーの客が部屋を利用するのである。
高額ツアーのアテンドはツアー会社の社長朝霧(田中麗奈)で、格安ツアーのアテンドはちょっとダメな社員戸川(尾上寛之)だった。
この二人が無理のあるダブルブッキングをなんとか成功させようとするのだが、それぞれのツアーに参加している客が一癖も二癖もあるメンバーばかりのため、予定外のトラブルが次々と発生する。

原作がどれほど面白いのかわからないが、ズバリ言って映画としてはまったく面白くない。
文字で想像を膨らませると面白い作品が、実際に映像化されるととても安っぽくなってしまうケースが時折あるが、まさにこの映画はその典型的な例であろう。

映画は現実と北白川が構想する小説が交互に展開する。
現実部分はほぼパリでロケしていると思われるのだが、パリでロケという部分にとらわれ過ぎて、それ以外の部分がかなり雑に見えた。
そもそもストーリーがあり得ない設定だけに、映像化するには難しい内容である。
格安ツアーのメンバーは、高級ツアーのメンバーが夜に部屋に戻るため、夜間は部屋を使う事ができない。
最初の夜は居酒屋のようなところで夜明かしさせられていたが、次の夜からは「文化財のため夜間は部屋に入れません」と言われて納得し、屋根裏部屋で寝る。
しかし、観光旅行に来て昼の間だけ部屋を使えるという設定はあり得ない。
格安ツアーの人間が別の部屋で寝ることをすんなり了承した時点で、この物語は破綻してしまっているのだ。
原作がどうなっているのかわからないが、脚本的にはこの格安ツアーの客を夜間どうするかの「理由付け」の部分を、相当練り込む必要があった。
演出的にも、大慌てで荷物を片付けて掃除をするホテルスタッフの動きが安っぽすぎる。
あれではまるで、一昔前のバーゲンで安物目当てに走るオバちゃんたちである。
高級ホテルのスタッフであるならば、落ち着きながらも神業的なスピードで片付けをするプロ軍団、という演出の方が面白味が出たと思う。

さらに、北白川が構想する小説シーンがあまりにもお粗末。
一部の街路のシーンはロケで、それ以外の重要なシーンはすべてスタジオ内の撮影だと思うが、そのセットがあり得ないくらいの安っぽさだ。
北白川の構想という事でライティングなどを工夫したのかもしれないが、スクリーンに映ったシーンは高校生の演劇かと思うほどの安っぽさだった。

一方で、役者陣は実力者を揃えており、演技もきちんとこなしている。
脚本、演出が安っぽいだけに、役者がいい演技をすればするほど違和感が強くなってしまった。
そのため、エンディングの人間関係もとても薄っぺらく感じた。


39.王妃の館


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by ksato1 | 2015-05-06 09:45 | 映画 | Comments(0)