「ゴーン・ガール」

妻が失踪し、夫に妻殺しの疑いがかけられる、予告編を見た限りではミステリーかと思っていたが、実際にはかなり怖いサイコスリラーであった。
正確に言えば、前半がミステリー、後半がサイコスリラーである。

ニック・ダン(ベン・アフレック)NYで男性誌のライターをしていたが、そこでエイミー(ロザムンド・パイク)と知り合う。
エイミーもライターであったが、彼女の母はエイミーをモデルとし、「完璧なエイミー」と言う大人気児童文学を発表していた。
小説の中の「完璧なエイミー」は、幼少から楽器を演奏しスポーツでは代表選手を目指すような「完璧」具合だった。
しかし実際のエイミーはごく普通の少女で、楽器もスポーツも大して上手くならず途中で辞めている。
エイミー自身はその事に強くコンプレックスを感じており、自分の事を「クソ女」と蔑んでいた。

ニックとエイミーは結婚するが、ニックの母親の病気のためNYからミズーリ州に転居する事になる。
その際二人は仕事を辞め、エイミーが出資してバーをオープンする。
バーを切り盛りするのはニックの双子の妹のマーゴ(キャリー・クーン)で、ニックとエイミーは店で働いていない。
やがて少しずつ生活に困窮するようになり、夫婦仲は次第にギクシャクしはじめる。
そんななか、二人は結婚5周年の記念日を迎えた。

エイミーは毎年、ニックにプレゼントの宝探しをさせる。
家のどこかにヒントが残されており、ヒントをたどるとプレゼントが見つかると言う趣向だ。
しかしそういう態度から、ニックはエイミーが自分の事をバカにしていると感じていた。
そして実際エイミーは、自分とは教養のレベルが違うニックに、だんだん失望しはじめてもいた。

記念日の朝、ニックはバーに寄って妹に夫婦生活の愚痴を言う。
その後帰宅すると、家の中が荒らされエイミーがいなくなっていた。
ニックは警察を呼び捜査が始まるのだが、夫婦が不仲でかつ、ニックがカードで高額な買い物をしていたなど不利な状況が次々明らかになる。
さらに、ニックが公開捜査のTV中継でつい微笑んでしまったり、マーゴにも内緒にしていた愛人の存在が発覚するなど、ニックはどんどん追いつめられていく。

と、ここまでがストーリーの前半である。
映画のちょうど折り返し点で、これまでの状況がいったんすべて整理され、犯人が誰だかわかる。
「えっ? この段階で犯人がわかっちゃって、残り時間はどうなる?」と一瞬不思議に思うのだが、ここからサイコスリラーとしての作品がスタートする。

若干ネタバレになるが、サイコスリラーとしての主役はエイミーだ。
彼女が母親作の「完璧なエイミー」に対して感じていたコンプレックスにより、かなりサイコな性格へとゆがめられていた。
それが事件発生の原因であった。
ニックも優しい男ではあるが、浮気をするなどかなりいい加減な性格であった。
そしてエイミーは、ニックにもっと知的な男性になってもらいたかった。
映画の冒頭から夫婦仲に亀裂が入っていた事は表現されているのだが、その内容が明らかになるにつれ、内面に抱えている闇が大きくなった事でここまでの事件が起きたのかと、観ていてどんどん恐ろしくなってきた。

2時間半とかなり長い作品であるが、遠い過去と現在、そして事件前日、当日と時間軸を巧みに使い分ける手法で、まったく飽きずに最後まで観る事ができた。
ただ唯一の欠点は、終盤でエイミーが「どうせ私は『クソ女』だから!」と叫ぶシーンまで、エイミーが「完璧なエイミー」に強いコンプレックスを抱えていた事がわかりづらい事だ。
と言うか、その間が2時間くらいあるので、冒頭で「完璧なエイミー」について説明されていた事をすっかり忘れてしまっていた。
あまりにも強烈な展開のため、このエイミーの「どうせ私は『クソ女』だから!」と言うセリフがあっても、エイミーが「完璧なエイミー」にコンプレックスを持っていた事がわかりづらい。
もう少し要所要所で「完璧なエイミー」に触れておいた方が、より一層この映画の恐ろしさが強調できたんじゃないかとも思う。

映画としては完成度が高いと思うが、それだけにこれから結婚しようとする人、もしくは結婚5年以内の人にはあまりオススメできない。
私自身もしばらく人間不信に陥りそうだ。


166.ゴーン・ガール


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by ksato1 | 2014-12-15 22:11 | 映画 | Comments(0)