人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「百瀬、こっちを向いて。」

正直最初はノーマークの映画だったのだが、ネット、新聞の映画評がすこぶるいい。
同じ時間に同じ劇場で「カリオストロの城」のデジタルリマスター版が上映されており、どちらを観るかかなり迷ったが、こちらを観る事にした。

物語は、主人公の相原ノボル(向井理)と高校の先輩である宮崎徹子(中村優子)が、喫茶店で高校時代を回想するところから始まる。

15年前、相原ノボル(竹内太郎)は本当にさえない高校生だった。
自らを「レベル2」と称し、学校のアイドル神林徹子(石橋杏奈)に憧れているが、遠くから見る事しかできない。
親友の田辺(ひろみ(第2PK))と自分たちがいかにイケてないか、自虐ネタを繰り広げていた。

そんなある日、相原は幼馴染みで高校の先輩である宮崎瞬(工藤阿須加)に声を掛けられる。
宮崎はバスケ部のエースで学校のスーパーヒーロー、付き合っている彼女は相原の憧れる神林徹子だ。
相原から見て宮崎は「レベル99」であり尊敬する先輩だったのだが、宮崎は相原に百瀬陽(早見あかり)を紹介し、彼女と付き合っている振りをしてくれと頼んでくる。
宮崎は神林徹子と百瀬の二人と付き合っていたのだが、百瀬とこっそり会っている所を目撃され噂になってしまっていたのだ。
断る事もできず、流されるままに百瀬との不思議な関係を続けるのだが、彼女に振り回されているうちに、相原は自分に正直に生きる百瀬を好きになってしまっていた。

一言で言えば、かなり「いい感じ」の青春ストーリーである。
原作は中田永一で、乙一の別名だ。
これも原作は未読なのだが、おそらく原作の持つ「青春のやるせなさ」がきちんと映像化されているのだろう。
自然光を多用しながらも、青春映画らしく極力明るい画面になるよう撮影されている。
そのため、時にはバックの露光が飛んでしまっているシーンもあるが、この明るい画面が映画全体にさわやかな印象を強めている。

そして、主要キャストの4人がとてもいい。
石橋杏奈以外は役者としてはまだまだ新人の域を出ない3人だが、石橋杏奈も含めてそれぞれのキャラが際立っていた。

文字通りのお嬢様で、見た目も美しくおっとりしている神林徹子は、どこまでもノーブルでイノセントだ。
百瀬は常にポジティブ、自由に生きて相原を振り回すワガママ娘のように見えて、実は4人の弟妹の面倒を見る頑張り屋さん。
この女性二人に比べて、男性二人はちょっと歪んでいる。
いわゆる普通の家庭に暮らすものの、運動も勉強も目立たず自分に自信がまったくない相原ノボル。
スーパーヒーローのように見えて二股交際をし、さらに相原を利用しているのだが、その事に嫌悪感を感じている宮崎瞬。
そして百瀬と相原はともに、届かぬ思いに心を痛めているものの誰も責める事ができず苦悩している。

ある意味、青春の王道とも言える四角関係だ。
地方の中都市という舞台設定にしているため都会の生々しいイヤらしさがなく、清々しい高校生の純愛が展開する。
また、相原の親友の田辺の「ユルさ」が、クライマックス付近で強烈に効いている。
この田辺を効果的に使った事で、完成度がワンランクアップした感もある。

もう50近くになるヒゲ面のオッサンでも、こういう青春ストーリーは甘酸っぱさを感じる。
さすがに泣くことはなかったが、クライマックスの河川敷の「百瀬、こっちを向いてよ!」のセリフには胸がアツくなった。

ちょっと青臭さを懐かしみたい人には、オススメの作品だ。


70.百瀬、こっちを向いて。


※こんな本書いてみました。
よろしかったらご購読ください


●放射能ヒステリックビジネス

http://www.amazon.co.jp/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9-ebook/dp/B00DFZ4IR8/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1371517543&sr=8-1&keywords=%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%83%92%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF
by ksato1 | 2014-05-16 21:46 | 映画 | Comments(0)