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「ツナグ」

これはまだ、パスポートをもらう前に観た。

原作は辻村深月で吉川英治文学新人賞を受賞している。
いつものように原作は読んでいないのだが、映画としてはかなり面白かった。

ツナグは、死者を1日だけこの世に呼び戻せる能力を持っている。
元々は占い師として栄えた秋山家に伝わる能力であるが、現在は秋山家から渋谷家に嫁いだ渋谷アイ子(樹木希林)がその能力を受け継いでいる。
アイ子は年のためにそろそろ引退を考えており、孫の歩美(松坂桃李)に能力を受け継がせようと考えていた。
そのお試しという訳ではないが、依頼者と死者の橋渡し役を歩美が担当する事になる。
歩美が担当するのは、老母を呼び出す中年の男性、親友を呼び出す女子高校生、行方不明の婚約者を呼び出す30代の男性、の3人である。

死者を呼び出すという部分で、現実にはあり得ない話である。
この手の話は、そのあり得ない部分にどうリアリティを持たせるかがカギとなるが、この作品では呼び出された死者が本物かどうか、呼び出しているツナグでさえよくわかっていないという設定にしている。
整合性を付けるための無理やりな理論を押し付けてこないので、逆に話がリアルに思えてくる。
さらに、ツナグがどうやって死者とコンタクトを取るのか、その部分の表現方法もなかなかいい。
会話内での説明に頼らず、物語が進むにつれ少しずつコンタクト方法とストーリーの核心が明らかになってくる。

ストーリー展開も巧いし、かなり感動的な物語でもうちょっと話題になってもよさそうなものだが、映画としてはややバランスが悪いかもしれない。
その部分がちょっともったいなかったかな。

まず最初の老母を呼び出す中年男性のエピソードは、かなりの感動モノだ。
息子が遠藤憲一で母親が八千草薫だから、これがもう泣けない訳がない。
この時点で劇場内にはすすり泣きの音が聞こえていた。

だが、続く女子高校生のエピソードで雰囲気は一転する。
仲の良い女子高生によくある信頼と嫉妬がテーマになっているのだが、かなりシビアな内容で、かつ橋本愛と大野いとの演技が巧すぎるためにちょっと引いてしまう。
橋本愛は「告白」と「桐島、部活やめるってよ」でも激しい性格の役を演じていたが、地なのか演技力なのか、とにかく巧い。
そのため観ている方は、最初のエピソードとの落差に戸惑う事になってしまう。

その後の30代の男性のエピソードからラストへのつなぎ方は、非常に手堅い感じである。
途中で結末はだいたい予想が付いてしまうのだが、不満は感じない。
と言うか、むしろ心地よさを感じる。
なぜなら松坂桃李と樹木希林の孫と祖母が、全編を通して食事をしたりカーテンを繕ったりお茶を飲んだり、常に絶妙の距離感を保っていてラストもこの演出と演技が見事に効いているからだ。

途中、やりきれなくなりそうな場面もあるのだが、全体としては非常にいい出来の映画だと思う。


103.ツナグ


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by ksato1 | 2012-11-09 19:44 | 映画 | Comments(2)
Commented by 名もなき戦士 at 2012-11-11 17:19 x
はじめまして。おじゃまします。
泣くかな~と思いながら観に行ったのですが
どうにか我慢しました(笑)
ほんと樹林さんと桃李くんが 本当の肉親のようでしたね。
思いやりながら暮らしてる様子がリアルで。
女子高生の再会の話は 一度観ただけでは理解できなくて。
怖い&切ない結末だったのですね。。。
最近 JUJUさんがテレビによく出てたので
主題歌を聴くと思いだしてました。
映画も思ったよりヒットしているようで良かったです♪
Commented by ksato1 at 2012-11-11 19:15
>名もなき戦士さん

コメントどうもありがとうございます。

最初の遠藤憲一と八千草薫のエピソードの時は、私も「ここでこれだけ泣きそうになるって事は、最後は号泣しちゃうかも」と思いましたが、なんとか最後まで我慢できました(^_^;;

エピソードだけではなく、やはり祖母と孫の心の交流が、さらに感動を引き立てているのだと思います。