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「アイアン・スカイ」

愛すべきおバカ映画と思って観に行ったのだが、若干消化不良な部分も残る作品だ。

まず、設定はメチャクチャである。
2018年アメリカの月探査ロケットが月面に降り立ったのだが、そこで宇宙飛行士が見た物はナチスの秘密基地だった。
そもそもなぜアメリカが40年ぶりに月面探査を行ったのかと言うと、アメリカ大統領(女性)が次の大統領選を見据えて、黒人の宇宙飛行士を月面に立たせると言うイメージアップ作戦を企んだからだ。
さらについでに言えば、ヘリウム3という貴重な元素が月面にあるかどうかの調査も兼ねていた。
しかし実際には月の裏側には、第二次世界大戦後にドイツから逃げのびたナチスの末裔が基地を構えており、60年以上にわたり地球帰還を夢見て侵略体制を整えていたのだ。

このあたりの設定のメチャクチャ感は面白い。
黒人の宇宙飛行士がナチスのマッドサイエンティストによって白人にされちゃったりとか、基本的にはゲラゲラ笑える展開にもなっている。
ただ、ナチスが出てくるだけに、途中結構な差別発言もある。
ユダヤ人に対してではなく黒人に対してなのだが、日本人の私からすると、笑っていいのかなとちょっと戸惑う。
実際、映画館も微妙な反応だった。

また、途中まではかなりお笑いの要素が強いのだが、侵略シーンになるとお笑いがほとんどなくなる。
途中で予算が底を尽きて、世界中からカンパで1億円を集めて映画にしたと言うだけあって(本当かどうかはわからないが)、CGもかなり力が入っている。
そのためお笑い部分を目立たなくしたのかもしれないが、個人的にはもっとはじけて最後までおバカ映画を貫き通してほしかった。
ラストはちょっとブラック過ぎると思うし。

月の裏側のナチス軍は独自の技術革新を行っているため、月-地球間を航行する宇宙船を持っている物の、デザインなんかは第二次大戦前後の古臭いままである。
優秀な演算能力を持つコンピュータもあるが、部屋の壁一面を覆う程デカい。
宇宙飛行士が持っていたiPhoneを見て科学者が驚嘆し、すぐにそれを宇宙船に組み込んで地球侵略を始めようとするのだが、「もしも、月の裏側でナチスの残党が軍隊を作っていたら」と言う命題がきちんと処理している。
世界観はしっかりしているのだが、キチンと作ろうとして逆に中途半端になっちゃったという感じかな。
完全に吹っ切ってお笑いに徹しておけば、B級映画として評価されたんじゃないかと思う。
ちと残念な作品だった。

89.アイアン・スカイ


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by ksato1 | 2012-10-05 22:55 | 映画 | Comments(0)