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「海猿 UMIZARU EVOLUTION」

仕事でかなり追いつめられてちょっと間が空いたが、TVドラマシリーズの「海猿 UMIZARU EVOLUTION」だ。
原作は読んだ事ないのだが、「EVOLUTION」と付くように、ドラマは原作とはまったく違う話になっているらしい。
でも見たことある人ならわかると思うが、このドラマは本当に泣ける。
いや、泣けるシーンはただ一カ所、池澤(仲村トオル)が考えた子どもの名前を、仙崎が尚子(芳本美代子)に届けるシーンだ。
このシーンは何度見ても、涙を止めることができない。
でも全11話が、このシーンのためにあると言っても過言ではない。

映画「海猿 ウミザル」で海上保安大学校の潜水士課程を卒業した仙崎は、1年間北九州で勤務をしたあと横浜に配属され、巡視船「ながれ」に乗船する。
そこでバディを組むのは、特急隊出身の池澤だ。
自分にも他人にも厳しい池澤は、なかなか仙崎を認めようとしない。
仙崎も最初は自分を認めてくれない池澤に不満があったが、初めて体験した海難救助の現場で、池澤の深い思慮を理解できなかった自分の甘さと未熟さで犠牲者を出してまい、潜水士としてのレベルの差をまざまざと見せつけられてしまう。

仙崎はそこから、なんとか池澤にバディとして認めてもらおうと、もがき、苦しむ。
池澤から厳しい課題を突き付けられ、危うく命を落としかけても、仙崎は池澤を崇拝した。
あるきっかけで池澤が「ながれ」を去ろうとする時も、恥も外聞もなく池澤に「行かないでください」としがみつく。
そんな時「ながれ」は不審船を追尾することになり、池澤と仙崎は不審船に向かって実弾を発砲する。
不審船は自爆をして沈没、乗船者は行方不明となったが、二人は自分たちが人を殺した事に悩む事になる。
同じ悩みを抱えながら、「ながれ」は今度はシージャックを追う事になった。
そこで危険な状態から仙崎が人質を無事救出し、はじめて池澤に認められるのだが、その直後に池澤は犯人の凶弾に倒れてしまう。

池澤は「ながれ」乗船の6人の潜水士の中で唯一の既婚者で、もうすぐ子どもが生まれると言う設定だった。
潜水士の隊長の下川(時任三郎)はバツ一で、仙崎を含めてその他の4人は独身だ。
潜水士は勤務も不規則で緊急出動があるためデートもまともにできない、それを乗り越えて結婚の話が出ても、常に危険と隣り合わせの仕事では、なかなか話がまとまらない。
ドラマ版では、常にこの設定が下敷きになっている。

実際の潜水士の仕事がどうかはわからないが、この人命救助と言う誇り高き仕事とプライベートの両立が、ドラマの中では一つのキーとなる。
実は隊長の下川も、仕事で家庭を顧みなかった事が原因で離婚をしている。
仙崎以下独身の4人+この後潜水士となる吉岡(佐藤隆太)は、女っ気がない事が悩みのタネであり、潜水士の一人はそれが原因で途中で離脱してしまう。
そんな中で、唯一仕事とプライベートの両立をしていたのが池澤だった。
池澤の妻尚子も、常に池澤の身を案じて帰りを待っていた。
仙崎の仕事が原因で環菜とすれ違いが多くなった時も、この池澤夫妻の姿を見て二人は溝を埋めている。
仙崎にとって池澤は公私に渡る目標の人物で、ある意味「ながれ」に乗船する潜水士全員の目標だったと言ってもいいだろう。
それは隊長の下川も同じで、実の娘が要救助者になったときでも冷静を装い声を荒げなかった下川が、池澤が凶弾に倒れたときだけは「池澤を撃ったのは誰だ!」と叫んでいた。

この池澤に仲村トオルを抜擢したことが、結果的にこの後のシリーズ全体の成功を生んだと言っても過言ではない。
仙崎役の伊藤英明もよく体を鍛えていると思うが、特急隊出身の池澤はさらに仙崎よりも鍛えた筋肉になっており、仲村トオルが究極にストイックな潜水士の役を作りあげている。
現場に配属された後もいろいろと迷いを持つ仙崎だが、池澤の死を乗り越えた後は、常に人命救助と言う仕事に誇りを持ち続ける。
これがシリーズ全体のゆるぎない芯となっているから、この後の映画でも共感を持てるのである。

そして隊長の下川を演じた時任三郎だ。
下川はこの後本庁に戻り、映画版では陸から現場の指揮を行う。
現在公開中のPart4はまだ観ていないのでわからないが、2、3ではこの下川が、現場のために上司を懸命に説得する立場になる。
冷静沈着だがアツい気持ちは決して失わない、この「理想の上司像」を確立したことも、「海猿」シリーズのヒットの要因だろう。
そしてこの下川役を時任三郎にしたことは、見事だと思う。

TVドラマを見てなくても、映画は海難救助物としてそこそこ楽しめるだろう。
特にサラリーマンには、現場の人間の気持ちを救ってくれる「理想の上司像」下川に共感が持てるしね。
でも、その下川と言う人間のバックグランドを理解するためにも、やっぱりこのTVドラマが重要なんだよね。
このTVドラマを見ておいた方が、後の映画シリーズも何倍も楽しめると思うな。



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by ksato1 | 2012-07-25 22:40 | 日記 | Comments(0)