「北の国から'98時代」

BSフジで放送された「北の国から'98時代」を録画して見る。
そりゃ見るさ、何と言ってもこの「'98時代」こそが、シリーズの集大成になっているからだ。
この後に「2002遺言」もあるが、どちらかと言えば「'98時代」で一度決着が付いた部分の後日談としての要素が強いんじゃないかと思う。

「'98時代」の一番のハイライトは、やはり草太の事故死だろう。

「'92巣立ち」あたりから反発していた純が五郎の事を少しずつ理解し始め、「'95秘密」では正吉と一緒に富良野で暮らしてやっと落ち着いてきたかなと思ったら、今度は優等生だったはずの蛍が不倫をして相手と駆け落ちしてしまう。
純の恋人のしゅうもいい子で、五郎にとって唯一の心配の種は蛍だった。
そして「'98時代」では、その蛍が妊娠して札幌に戻って来る。

ここで登場するのが、草太兄ちゃんだ。
いろいろな人に無心をして中畑のおじさんにも断られ、八方ふさがりになった蛍は草太の所に行く。
そこで草太が言った言葉が「なんだ、20万円でいいのか。それなら大丈夫だ。オラ、昔の草太兄ちゃんじゃねぇ」である。
この言葉にこれまでの黒板家、そして富良野の苦労が凝縮されている。
草太自身、兄たちと同じように都会に出たかったのだが、両親を思って富良野で農業を継いだ。
だがどこも生活は楽ではなく、一歩間違えれば借金を背負って夜逃げをしなければならない。
レイちゃんの家族も実際夜逃げしている。

それに村には嫁も来ない。
アイコとの結婚式を農場で行って、TV局に取材をさせようとしたのも、富良野に嫁が来てほしかった一心である。
だからこそ、草太はみんなを思って借金をしてでも事業を拡大させたのだ。

しかしその結果、草太の強引な経営方針に周囲は付いていけなくなってしまう。
だが、草太の気持ちは誰よりも強い。

それは、正吉と蛍を無理に結びつけようとした部分でもわかる。
正吉に「おめえ、本当は蛍ちゃんの事好きだったんだっぺ」、「お前に取って黒板家は家族だろう」など、正吉の気持ちのすべてを理解している。
正吉を含めた黒板家の人々を常に気遣っていたからこそ、正吉の本当の気持ちがわかったのだ。

でも草太は、誰にも理解されないまま事故死してしまう。
しかも最後は純に考え方を否定され、純の手伝いがあれば事故にも逢わなかったかもしれない。
純は当然動揺する。
しかもその後、正吉と蛍の結婚式を盛大に予定していた事で、さらに草太が黒板家のためを思っていた事がどんどん明らかになる。

結婚式当日、五郎と純のために草太がリムジンを用意していたエピソードが、「北の国から」のすべてを物語っている。
純や蛍が小さかった頃、いつも貧乏で何も買ってもらえない二人を草太や中畑が気遣い「それじゃ純君と蛍ちゃんがかわいそうだべ」と手を回そうとすると、五郎は「いいんだ! 俺は俺なりに子どもたちの事を考えて、出来る限り精一杯の事をしてるんだから、余計な事しないでくれ!」と怒りだす。
今回、純が拗ねた五郎を説得するのに2時間半掛かったと言う部分で、「ああこれこそが『北の国から』だよな」と思わずにいられなかった。

そして最後の、スピーチの練習テープである。
やっぱり泣けるよね。

でも、草太が死ぬのがわかっていたので、今回見た時はどちらかと言えば、後編よりも前編の方が泣けた。
草太が正吉に「蛍と結婚しろ」と説得しているシーンでは、この後草太が事故死するのがわかっているだけに、涙が止まらなかった。

そして正吉が蛍に花を送り続けるシーンもいい。
後編のラストの中島みゆきの「時代」もいいけど、このシーンの加藤登紀子の「百万本のバラ」も心に沁みる。
正吉のお母さんのコミカルな演技もメリハリになってるしね(^_^;;

正吉と蛍が結婚して、純もしゅうと上手く行きそうだ。
これで五郎は何の不安もなく、草太さえ生きていれば、富良野に本当に幸せが訪れたと言っても良かっただろう。
ここでいったん、ある程度のハッピーエンドになっていると言えるかもしれない。
でも「2002遺言」は、唯一の不幸であった草太の死が原因で、牧場経営が破綻するところからスタートする。
その結果このドラマは、奇跡的な幸せでもなく壊滅的な悲劇でもない、とても現実的な結末を迎える事になる。
見ている者のほとんどが、番組終了後の彼らの未来を予測できるだろう。

そういう意味でも、ドラマとしては「'98時代」で終了して「2002遺言」は後日談と、個人的には思える。
でも一般的にはやっぱり「2002遺言」までで、「北の国から」なんだろう。

倉本聰は、その後の話も構想したりしているようだ。
この設定を引き継ぐけど、タイトルと視点をまったく変えたドラマを作っても、面白いかもね。


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by ksato1 | 2012-06-25 00:16 | 日記 | Comments(0)