「セイジ -陸の魚-」

東京芸大卒業で山本寛斎の異母弟だという、伊勢谷友介の監督作品だ。
原作を読んでないのでなんとも言えない部分もあるのだが、ちょっとアーティスティックに作りすぎて主題がわかりづらくなってしまった印象である。

主人公(森山未來)は就職が決まった夏休みに気ままな自転車旅行をしていたが、途中で事故にあって自転車が壊れ、山道の途中にあるドライブイン「HOUSE 475」で住み込みのアルバイトをする事になった。
その店のオーナー翔子(裕木奈江)は、子どもを取り上げられた代わりに店を与えられた、バツ一の蔭のある女である。
傷心の翔子が店を始めようとしたときに、ふらりとセイジ(西島秀俊)が現れ雇われ店長をしている。
店には30歳前後のバンド仲間をはじめとする常連がおり、その常連から主人公は旅人と呼ばれるようになった。
旅人はセイジや常連客と一緒にいることに居心地の良さを感じ、ずるずるとアルバイトを続けるのだが、ある日常連客のうちの一人の家が、連続殺人犯に襲われることになってしまう。

ズバリ言ってしまうと、出演者の演技力に頼りきった映画だ。
物語は20年後の旅人が、「HOUSE 475」を再建するプロジェクトに目を止め過去を振り返る、という構成なのだが、物語の主題がよくわからない。
旅人が大学生活最後の夏に出会ったセイジや翔子、店の常連たちが、旅人の人生にどう影響したかも語られていないため、単なる「ひと夏の経験」と化してしまっている。

また、常連客の人物相関図もわかりづらい。
どれだけ長い付き合いなのか、対等なのかそれとも年齢を含めた上下関係があるのか。
常連は、翔子を「さん」付けで呼んで敬語を使うが、セイジにはタメ口だ。
しかしセイジは雇い主の翔子にもタメ口である。
そのあたりが原作通りなのか、あるいは映画化にあたって弱くなっているのかは、良くわからない。
たしかに作品としては、西島秀俊のセイジが雰囲気たっぷりで、それ以外の出演者の演技も非常に良く、さらに演出的にも作りこまれているので、なんとなく映画として仕上がっている。
それは伊勢谷友介の才能なのかもしれないが、伊勢谷友介自身が脚本も担当している事まで考えると、やはり作品に物足りなさを感じてしまう。

クライマックスシーンの意味も、正直よくわからない。
セイジは何を考え、何をしたかったのか。
ただ単に不器用なだけだったのか。
その肝心な部分がまったく表現されていない。

映像に奥行きがあるし、何より音楽が素晴らしかった。
ピアノソロのテーマソングは「戦場のメリークリスマス」レベルの名曲で、サントラ盤が欲しくなった。
しかしいかせん、脚本のわかりづらさゆえ「面白かった」とは言えない作品になってしまっている。

西島秀俊は「CUT」に続いて、役柄に恵まれない感じである。
一方、多少痩せてシワが増えたとはいえ、裕木奈江は「北の国から」の頃とまったく変わらなかった。
今考えてみると、若い時から言い表せない色気があって、年齢がやっと色気に追いついてきたんじゃないかと思う。
童顔なのに妙な色気があるところが、バッシングを受けた原因かもしれないね。


27.セイジ -陸の魚-


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by ksato1 | 2012-03-22 19:42 | 映画 | Comments(0)