「悪人」
田舎町を出る事が出来ず、同世代の友人もいない鬱屈した生活を送る祐一。
出会い系サイトで彼女を探すが、そこにまともな人間がいるわけもない。
仕方なく援交に近い交際を求める祐一。
被害者の佳乃は、祐一とそういう付き合い方をしていた。
現代風のちゃっかりした性格で祐一と金銭の付き合いをしながらも、一方で本命は玉の輿に乗るべくお坊ちゃまを追っかけている。
もちろん祐一を見下していた。
そんな中で起こる殺人事件。
そして事件の後、祐一は光代と奇跡の出会いをする。
いったい誰が本当の「悪人」なのか。
もちろん被害者の父である佳男が一番悩むのだが、事件の真相に迫っていけば行くほど、それが祐一と言い切れるかどうかが疑問になる。
コンプレックス、見栄、欲望、勝ち組意識、これら現代の若者の深層心理を巧く突いた作品である。
何より、深っちゃんがいいよ。
しっかり者のすみれさんより、不器用な女の役の方が良く似合うよ、深っちゃんには。
不器用な姉と器用な妹という設定は、ちょっと「(ハル)」に似てるかな。
そりゃ外人が観たら、賞をあげたくなっちゃうでしょうよ。
昔流で言えば「体当たりな演技」もしてるしね。
いや、さすがにトップは見せてませんよ、当然。
でも十分な濡れ場だった。
妻夫木聡の祐一はどうかなと思ったが、それほど悪くなかった。
妻夫木と言えばこれまでは、見た目もよくて頭もいい、性格も悪くない「いろいろな物を持っている人」の役が多かったように思う。
性格の悪い役はあったかもしれないが、こういう冴えない役はなかった。
だが、中途半端な金髪やファッションセンスなどで、見事ダサダサな役どころを演じている。
そして満島ひかりと岡田将生だ。
この二人の演技が光っている。
この二人があってこそ、対象となる祐一と光代の影の部分が引き締まってくる。
キャスティング、脚本、演技、どれを取っても悪くない。
ラストの落としどころも含めて完成度は非常に高いと思う。
ただ「告白」とか「十三人の刺客」と比べると、インパクトと言う部分ではちょっと弱かったかな。
83.悪人